軟部外科

2024/02/25 |

外傷性横隔膜ヘルニア

外傷性横隔膜ヘルニアについて

横隔膜は胸部と腹部を分ける板状の筋肉です。

交通事故などの強い外傷により横隔膜が破れお腹の内容物が胸の中に入り込んでしまう病態を外傷性横隔膜ヘルニアといいます。

当院では仔猫の外傷性横隔膜ヘルニアをよく診ます。

症状

呼吸困難が最も多い症状です。消化管障害や循環異常が起きることもあります。

診断

レントゲン、超音波、CT検査により確定します。

治療 

手術により胸に入った臓器をお腹に戻し、破れた横隔膜を修復します。

症例

仔猫 680 g

主訴:保護したが呼吸が荒く、食欲があまりない。

レントゲン検査で横隔膜ヘルニアと腕の骨の骨折を確認しました。

腕が折れていたため交通事故などによる外傷性の横隔膜ヘルニアと診断しました。

折れた骨がくっつき始めているので受傷後ある程度時間が経っていると思われます。

ICU装置内にて状態を安定化させたのち手術しました。

胸腔内の臓器を腹腔内に戻し腹壁を閉じると肋骨が引っ張られ呼吸困難となり、酸素濃度が低下していきました。成長期に横隔膜ヘルニアになり腹腔が成長しなかったためこのようなことが起きたと考えられます。すぐに腹壁をあけ、無理に閉じずに腹壁の筋肉の一部をプロピレンメッシュという人工素材で代用し、皮膚を腹筋から剥離、伸長し閉じ皮膚がくっつくまではフィルムで保護しました。成書にはない方法でしたがうまくいきました。

呼吸、酸素濃度ともに安定したため麻酔から覚ましました。

術後レントゲン

翌日から元気、食欲問題なく退院しました。

状態によりますが退院率は82~89%と報告されています。

退院後は普通の猫ちゃんと同じように寿命を全う出来ます。

 

 

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