循環器
犬の僧帽弁閉鎖不全症
犬の僧帽弁閉鎖不全症について
心臓の役割
心臓は全身に酸素や栄養を含んだ血液を回すポンプの役割があり、4つの部屋に分かれています。
血液は一方向に流れ
全身→右心房→右心室→肺(酸素を血液に取り込む)→左心房→左心室→全身
の順にぐるぐる巡っています(循環)また逆流しないように弁があります。
僧帽弁閉鎖不全症
小〜中型犬の中高齢に多く、犬の心疾患の80%以上を占め、犬で最も多く見られる心不全の原因です。
僧帽弁装置に異常が起き、僧帽弁の場所で逆流が起きる病気です。主な原因として僧帽弁が変性(腫れる)ことで左心房と左心室の間に隙間が生まれ、左心室から左心房への血液の逆流が起き(僧帽弁逆流)左心房内圧が上昇します。進行していく病気で、僧帽弁閉鎖不全症の犬の約40%に様々な合併症
(肺高血圧症、大動脈逆流、三尖弁逆流など)が起きることもあります。
逆流が重度になり、左心房内圧の上昇が重度になると肺から左心房へ血液が流れにくくなり肺血管の圧が上昇します。一定の圧を超えると肺の中に血液の液体成分が漏れ出て呼吸不全になります(肺水腫)
*僧帽弁閉鎖不全症の治療
・内科治療
内服により進行を遅らせること、症状を改善させ生活の質を保つことがメインです。
進行や合併症の発生には個体差がかなりあります。定期的に検査(レントゲン、超音波、心電図、血液検査)による状態の評価から適切な内服を処方致します。
・外科治療
完治を目指します。
僧帽弁修復手術は一部の施設で可能です。
ご希望であれば信頼できる施設をご紹介します。
内科治療時のお家でのモニター、注意点
- 乾いた咳(カハァと喉に物が詰まったような咳)
左心房圧、肺血管内圧の上昇や、気管支の合併症などによって起きます。
- 痩せてきていないか
血のめぐりが悪くなったり、腎不全を合併したりすると痩せてきます。
- 失神、息切れ
血のめぐりが悪くなると疲れやすくなります。不整脈や重度の循環不全で
失神することもあります。
・ 水は常に置いておく
ACE阻害薬や利尿薬を飲んでいると脱水しやすくなります。
- 肺水腫になっていないか
肺水腫について
命に関わる緊急疾患です。
肺の中に水が溜まり呼吸がしづらくなります。
症状
呼吸が荒い、舌の色が悪い(青い)、ピンク色の泡を吐く、湿った咳をする。
などがありますが重症になると治療が難しいので肺水腫の初期段階で来院していただくことが重要です。
肺水腫の初期の症状は
安静時の呼吸数が増えます。安静時とは寝ている時や床に伏せて落ち着いている時です。呼吸数の数え方は息を吸う肋骨の動きで数えます。正常な呼吸では1分間に25回以下と言われています。
定期的にチェックすることで肺水腫の初期を発見できます。
安静時の呼吸回数は1分間に25回以下
内科治療ではどれくらい生きるのか
進行スピードや合併症発生は個体によって様々ですので予測は困難です。文献ではACVIMのガイドラインにてステージB2と診断され、ピモベンダンの内服を始めてからうっ血性心不全もしくは心臓死までの中央値が1228日と報告されています。
高齢で発症した犬は寿命を全うすることもあります。
午後15:00~18:30